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月別アーカイブ: 2025年11月

第27回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

✅ 森林認証(FSC/PEFC)と国際調達:信頼を可視化

 

木材の“良さ”は目に見えない。
だからこそ、第三者認証=合法・持続可能・トレーサブルを可視化することで
「信頼」をビジネス価値に変える。
本稿では FSC/PEFCの基本構造〜運用・コスト・販路拡大までを整理します。


① 用語とスキームのキホン

  • FM(Forest Management)
     森林管理の適正さを認証。
     → 施業・生物多様性・地域合意・労働安全などを審査。

  • CoC(Chain of Custody)
     産地から製品まで、認証材が混ざらず(または按分ルールで)流通していることを証明。
     → 製材・流通・加工・販売の各段階で必要

  • FSCとPEFCの違い
     | 項目 | FSC | PEFC |
    |——|——|——|
    | 成立 | NGO主導(国際本部=ボン) | 各国相互承認ネットワーク |
    | 強み | グローバルブランド・認知度 | 地域材・中小事業者対応力 |
    | 使い分け | 海外・輸出・建材 | 国内・公共・林業系 |

「どちらが上」ではなく、取引先・市場特性に合わせて選定/併用が現実的。


② 認証の経済価値 ➡️️

  • 入札・商談のパスポート
     公共調達、大手デベロッパ、量販店では「認証 or 合法性証明」が最低条件化。

  • 価格プレミアムより“継続取引”効果
     棚確保・返品率減・指名入札増など、“見えない利益”が長期的に効く。

  • リスク低減効果
     違法伐採・人権・労安・環境問題によるレピュテーションリスクを低減
     → 「損害回避=利益確保」。

“取れる利益”より、“失わない信用”を生むのが森林認証の真価。


③ 現場運用:紙ではなく“仕組み”で回す

  • 識別:認証材は色タグ/スタンプ/QRコードで明示。
     → 非認証材と置場を完全分離

  • 記録:出荷伝票・受入検収に**認証ID+数量(m³/本数)**を記載。
     → 写真台帳で証跡を保存。

  • 棚卸:月次で認証在庫を照合。差異→原因・対策を即日記録。

  • 教育:ラベル使用・ロゴ表示ルールを1枚シート化(写真付き)

“ラベル貼りミス”は認証取り消しに直結。現場教育を最優先に。


④ 取得コストと回収シナリオ

区分 内容 回収ポイント
初期費用 審査・マニュアル整備・教育・資材 補助金・団体共同取得で圧縮可能
運用費 棚卸・記録・年次審査・ラベル費 社内標準化で負荷軽減
回収方法 新規販路開拓・既存顧客維持・見積加点・ESG金融 長期的にROI>1を実現

“コスト”ではなく、営業投資+金融格付け強化と位置付ける。


⑤ 調達・規制との接続

  • 公共調達:合法性・持続可能性証明に最も明確な手段。

  • 企業方針:ゼロデフォレ・人権DD要件にCoC文書が流用可

  • 越境リスク:EU・米・豪など、輸入規制は合法証明を義務化。
     → “最初から認証”のほうが安く早い。

グローバル取引では「認証なし」は取引除外リスク


⑥ 表示とコミュニケーション ️

  • ロゴ使用ルール
     - サイズ・余白・配置に厳格基準あり。
     - 誤表示=信用失墜+契約違反

  • B2B資料
     認証番号・対象範囲・更新日・証跡フロー図を1枚A4で営業即提示。

  • B2C発信
     「森 → 製品 → 暮らし」のストーリーと地域性で、
     “同じ木でも選ばれる理由”を訴求。

「環境配慮」ではなく、「品質と信頼を示す証拠」として伝える。


✅ 現場で今日からできる3つ

1️⃣ 認証材の置場を認証/非認証で分割(即日対応)
2️⃣ 出荷伝票に認証ID欄を追加し、写真台帳と連携
3️⃣ 営業用の1ページ説明資料(番号・範囲・更新日)を作成


✨ まとめ:認証は“書類”ではなく“経営の言語”

  • FSC/PEFCはブランドではなく信用通貨

  • 「合法性・持続可能性・トレーサビリティ」を
     証拠で語れる会社が選ばれる。

  • 森林資源の信頼を“データ化”する仕組みを持つことが、
     次世代の競争力になります。

第26回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

労働安全衛生とチーム運用:現場を強くする

 

安全は“コスト”ではなく 利益の前提条件
KY/TBM、ヒヤリ・ハット、熱中症・騒音・メンタルケアまでを
チーム運用の型として定着させ、事故ゼロ+強い現場を実現します。


① 朝礼(TBM)10分の黄金パターン ⏰

手順 内容 ポイント
1️⃣ 今日の作業内容 地図・配置図で“見える化”
2️⃣ 危険ポイント3つ 具体+対策セットで伝える
3️⃣ 退避・集合合図 緊急連絡網と避難方向を全員で確認
4️⃣ 体調確認 暑熱・睡眠・薬服用などを共有
5️⃣ 役割分担 「誰が・何を・いつまで」を明確化

朝礼の目的は「今日の安全リズム」を全員でそろえること。


② KYカードとヒヤリ・ハット

  • KYカード=“書くこと”が目的ではない。
    → 対策が工程表に反映されたかをチェック欄で確認。

  • ヒヤリ・ハット報告

    • 目標:月10件/班(量が質を生む)

    • 形式自由:写真・手書き・音声メモOK

    • 表彰制度:商品券/休暇などでインセンティブ付与

⚙️ 小さな報告を積み上げるチームほど、大事故を未然防止できる。


③ 暑熱・寒冷・騒音・振動対策 ❄️

  • 暑熱対策

    • WBGT計で測定、閾値超→休憩頻度UP

    • 塩分タブレット・空冷ベスト支給

  • 寒冷対策

    • レイヤリング+防寒手袋+風よけ休憩所

  • 騒音対策

    • イヤマフ常用(チーム無線と両立するモデルを選ぶ)

  • 振動対策

    • チェンソー/刈払機の連続使用上限を設定

    • 防振手袋+作業交代制


④ メンタルと疲労管理

  • 過重サインの兆候
    → 遅刻・集中力低下・ミス増=疲労シグナル

  • 対応:早期に配置転換・作業負荷調整

  • 1on1ミーティング

    • 週1回10分、リーダーが“聞く”時間

    • 未消化の不満・疲労を可視化する場を設ける

メンタルケアは“特別”ではなく日常の点検項目


⑤ 事故時の初動:60分行動計画 ⛑️

フェーズ 時間 内容
T+0〜5分 現場停止/二次災害防止/119・上長へ連絡
T+5〜15分 応急処置(気道・出血・搬送準備)
T+15〜60分 現場保存・写真記録・関係機関連絡/SNS発信禁止

初動60分が再発防止の基礎データを決める。
SNS発信・個人撮影は厳禁


⑥ シフトと教育:多能工化で強くなる

  • 2in1配置
    (例)重機+チェンソー/左官+防水
    → 欠員に強く、応急対応力が上がる

  • 新入者ロードマップ(30-60-90日)

    • 30日:安全基本(PPE/KY/通報)

    • 60日:技能レベル(工具/設備操作)

    • 90日:品質・原価・改善提案

“多能工化”は安全×効率×雇用安定を同時に高める鍵。


⑦ KPIとレビュー

KPI項目 目的
休業災害件数 安全指標の最重要KPI
ヒヤリ報告数 未然防止活動の量的評価
TBM実施率 朝礼・情報共有の質を担保
教育達成率 人材育成と定着率に直結
欠員補完率 組織耐性・業務継続力の指標
  • 月次レビュー
    「事故=原因 × 対策 × 再発防止」を1枚図にして全班共有。
    失敗の共有速度が安全文化を育てる。


⑧ 表彰と文化づくり

  • 安全MVP:ヒヤリ報告・改善提案・模範行動を評価

  • 改善提案賞:現場発アイデアを表彰

  • 表彰頻度:四半期ごと(年4回)
    → 安全行動が“称賛される文化”を作る

安全文化=“叱る”ではなく“褒めて広げる”。


✅ 現場で今日からできる3つ

1️⃣ 朝礼で危険ポイント3つを地図にマーカーで描く
2️⃣ ヒヤリ投函箱を設置(月10件/班目標)
3️⃣ 事故時の60分行動計画をラミネートして重機に常備


✨ まとめ

安全は“守るためのコスト”ではなく、
「生産性・信頼・人の定着」を高める投資。

チームが同じ地図を見て、同じ行動パターンで動ける現場は、
事故も離職も減り、利益率が上がります。‍♀️‍♂️

第25回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

 

チェンソー安全とメンテ:刃先が会社を守る

 

チェンソーは最も身近で、最も事故率の高い機械。
刃の状態=生産性=安全性。
PPEから刃研ぎ・燃料・点検・伐倒・キックバック対策まで、
「事故ゼロと長寿命」を両立する現場基準をつくります。


① PPE(個人防護具)と基本姿勢

  • 必須装備
    チャップス(または防護ズボン)
    ⛑️ 安全ヘルメット(遮音シールド付)
    ✋ 防振手袋
    安全靴
    ゴーグル

  • 姿勢の基本

    • 腰を落とし、二点支持+体幹安定

    • 片手操作禁止!

    • 退避方向・障害物を先に整理


② キックバックの理解と回避

  • 原因:ガイドバー先端上部(危険域)が木材に噛む。

  • 対策

    • 上方からの切り込み禁止

    • くさび併用で逃げ代を確保

    • チェンブレーキ常用

    • 前足に重心を乗せすぎない

⚠️ キックバックは一瞬で顔面・上半身を襲う。
「刃を木に当てない角度」を体に覚えさせることが最大の防御。


③ 伐倒計画:“切る前の9割”

  1. 作業域整理(枝払・足元整備)

  2. 狙い方向決定(風・傾き・樹冠・障害物)

  3. 退避路2本確保(45°後方)

  4. 受け口:角度45°、深さ=樹径の1/4〜1/5

  5. 追い口:ヒンジ幅1/10〜1/8、水平方向に
     → くさび併用で押し出す

「倒す前の確認に5分、倒すのは30秒」──これがプロ。


④ 刃研ぎ:角度とデプスが命 ✨

  • 目立て角度:25°前後(チェン仕様に従う)

  • デプスゲージ:0.6〜0.8mm基準

    • 深すぎ → キックバック・振動増

    • 浅すぎ → 切れ味低下

  • 手順
    1️⃣ 左右均等に同回数研ぐ
    2️⃣ デプス調整
    3️⃣ バリ落とし
    4️⃣ チェン向き・テンション確認

研ぎは“力”より“角度”。研ぐ時間で会社のリスクが変わる。


⑤ 燃料・潤滑・冷却 ️

  • 燃料:2スト混合 50:1 目安
    → 長期保管で分離・劣化に注意

  • チェンオイル:燃料補給と同時に必ず補充
    → 枯渇=焼き付き即故障

  • 冷却清掃:シュラウド・フィン・エアフィルタを毎日清掃


⑥ 点検・整備スケジュール ‍

頻度 主な点検項目
日次 チェンテンション/バー片減り/スプロケット摩耗/ブレーキ動作/ナット緩み
週次 バー裏返し/クラッチ清掃/スターター紐チェック
月次 点火プラグ/燃料フィルタ/マフラーのカーボン除去

点検結果は「自分の名で残す」──責任が安全を生む。


⑦ 材に応じた切断:繊維と応力を読む

  • 張力側 → 圧縮側へ切る

  • 順序を誤るとはさまれ・バー噛み込み事故の原因

  • 曲がり・反り・根返りのクセを読む

応力を読める作業者=“刃を止めない人”。


⑧ 事故事例 → 対策

事故 原因 対策
キックバック 受け口浅い/追い口で先端刺さる 受け口角度45°・深さ基準厳守+くさび準備
はさまれ 張力側を後回し 応力読み+補助切り・くさび

⚠️ 事故の9割は「作業手順省略」と「刃研ぎ不足」。


⑨ 教育と資格:OJT+動画+ドリル

  • 3段階教材構成

    • 5分動画 × 10本(基本〜応用)

    • 現場ドリル × 5

    • 目立て実習(講師・先輩チェック)

  • 対象別:新入/中堅/リーダーで内容を変える


✅ 現場で今日からできる3つ

1️⃣ 受け口・追い口寸法をヘルメット内側に貼る
2️⃣ 目立て工具を個人一式化し、管理責任を明確化
3️⃣ 退避路をテープやスプレーで可視化してから切る