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第20回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~森林経営計画のつくり方:収支とスケジュール 🗓️💹~

森林経営計画は“申請書”ではなく経営の設計図。現場で迷わない導線と、資金が詰まらないキャッシュフロー、そして安全と環境の前提を一枚の地図に重ねることが本質です。

 

本回では、(1)棚卸し→(2)路網→(3)施業スケジュール→(4)人員・機械アサイン→(5)原価と収支→(6)リスク→(7)監視KPI→(8)合意形成、までをテンプレ化します。🌲🧭

 

0) 目的とアウトプット 🎯

目的:①安全に稼働 ②赤字現場を作らない ③再造林率を上げる ④地域の納得を得る。

アウトプット:A4×10枚以内の計画書セット(GIS地図、スケジュール、原価表、KPI、合意書式)。長い=良いではありません。

 

1) リソース棚卸し:数字と位置をそろえる 🧮🗺️

林分台帳:林齢・樹種・本数密度・材積(m³/ha)・地位指数・傾斜・作業難易度。

制約レイヤー:保安林区分、河川・湿地、文化財、鳥獣保護区、急斜面、法面崩壊履歴、通信圏外域。

境界:既存杭・石標・過去の立会記録・私設境界。写真と座標で証跡化。

品質把握:胸高直径分布(D級別)、枝下高、曲がり、病害の有無。歩留まり表の初期値を作る。

TIP:棚卸しは“1回完璧”ではなく改善サイクル。現場ごとに観測→台帳更新→次の見積精度UP📈。

 

2) 路網計画:“通す”のではなく“壊れない”を設計 🛣️📐

目標:集材距離の平均100m以下、旋回Rと待避所で交差ゼロ導線。

設計:縦断勾配(作業道8–12%/林道6–10%)、横断勾配2–4%、カーブR≥12–15m、横断溝30–50m毎、湧水の逃げ道確保。

材料・施工:路床転圧回数記録、クラッシャー粒度、法面マット仮撒き。雨期前倒しで排水先行。

維持:大雨後24h点検、詰まりリストの定期清掃。

 

 

3) 施業スケジュール:年→月→週→日へ分解 ⏱️

10年鳥瞰:間伐→主伐→更新(植栽・下刈・防護)を流域単位で配置。**作業の“連続性”**を意識。

年間計画:雨期・雪期・狩猟期・監査時期・補助採択時期をカレンダー化。許認可の待ち時間を工程に組み込む。

月次→週次:現場の切替タイミング、機械の整備週、教育日(安全・目立て・ドローン)。

日次:TBM(朝礼)のチェック項目、退避ポケットの設定、無線チャンネル、中止基準(降雨・視程)。

 

 

4) 人員と機械のアサイン:最小の班で最大の出来高 👷‍♀️⚙️

標準班:ハーベスタ1+フォワーダ1+補助1(3名)/ヤーダ型は集材2+土場1など。交替要員の確保で稼働1.2倍。

レイアウト:土場2面(処理用/積込用)で待ち時間削減。交差ゼロを原則に。

保守:日次→油水・グリス・センサー、週次→ローラ・ホース、月次→油圧・フィルタ。壊れる前に止める。

 

 

5) 原価と収支:式と前提を固定する 💴

時間原価:機械償却+金利+保険+保守+燃料+人件(円/h)。

搬出原価:集材距離・傾斜・路面強度・雨天率の係数で補正。

出来高:1サイクル材積(m³)÷サイクル時間(min)×60×稼働率。

現場採算:収入(用途別単価×材積)−(稼働時間×時間原価)−運搬−再造林費−保険。赤字ラインを事前に計算。

投資採算:路網・機械のNPV/IRR。例:路網90→120m/haで原価▲○%なら投資回収○年と明示。

 

 

6) リスク管理:トリガーと代替案を併記 🛡️

自然:大雨・台風・降雪・高温。中止トリガー(mm/h・WBGT)と代替作業(整備・仕分け)。

安全:60分行動計画(停止→通報→救急→現場保存)。

市場:単価下落時の用途転換(内装材・景観・熱)。

人員:欠員時の2in1配置(重機+チェンソー)で代替。

 

 

7) モニタリング:KPIで学習する 📊

KPI:出来高、搬出原価、稼働率、待ち時間比率、納期遵守、安全指標(ヒヤリ・休業災害)、再造林率。

見える化:現場ホワイトボード+月次ダッシュボード。赤信号の定義を数値で固定。

監査:写真台帳(出荷・排水・境界杭・PPE)、認証/補助の証憑をロットで紐付け。

 

 

8) 合意形成・近隣対応 🤝

1枚説明:工程、時間帯、車両台数、土埃・騒音対策、緊急連絡先。

立会い:境界・伐倒方向・通行。ドローン斜め写真でわかる化。

クレーム対応:24h以内の初動、写真と記録で再発防止へ。

ケーススタディ:6ha急傾斜の主伐更新 🧪

条件:傾斜25°、路網密度60m/ha、集材距離120m、D24中心。

計画:ヤーダ+プロセッサ、土場2面、横断溝40m毎、待避所80m毎。

結果見込み:出来高+18%、搬出原価▲9%、納期遵守98%、再造林率100%。

 

 

現場で今日からできる3つ ✅

現場KPIボード(出来高・待ち比率・納期・安全)を作って朝礼で共有。

中止基準(降雨・WBGT・視程)を紙と無線で周知。

路網図に排水・待避・危険レイヤーを追加し、写真台帳と連携。

 

第19回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~スギヒノキ人工林の課題とチャンス ~

戦後造成のスギ・ヒノキ人工林は、資源量のピークに向かう一方で、手入れ遅れ・過密・労働力不足・搬出コスト・花粉・風倒リスクなど、多岐の課題を抱えます。しかし“課題がある=価値創造の余地が大きい”ということ。現実的な打ち手を整理します️。

1) 過密→品質停滞→単価低迷の連鎖を断つ ✂️
間伐の遅れは年輪幅・枝下高・曲がり・節に直結し、JAS等級の壁になります。計測のデジタル化(胸高直径分布の自動化、ドローン写真測量、LiDAR)で“証拠を持って”最適密度へ。歩留まり表を現場で更新し続けましょう️。

2) 路網×機械化で搬出コストを削減 ️
路網密度が低いと集材距離が伸び、コストと事故リスクが増大。路面排水・カーブ半径・待避所などの標準仕様を持ち、フォワーダやスイングヤーダと整合する線形で設計。現場の“車線幅”と“旋回”を最初に決めるのがコツです。

3) 花粉・風倒・乾燥化への適応 ️️
品種と更新様式の見直し、混交化、列状間伐、林縁の防風帯整備でリスクを分散。乾燥ストレス増大には下層植生の維持と土壌有機物の回復が効きます。被害前提の“レジリエンス設計”で、保険・備蓄・バックアップ路網も整えます️。

4) 用途開拓:構造材+内装・家具・景観へ ️
節や色を“欠点”ではなく“意匠”に変えるのが2020年代の潮流。内装パネル・什器・小規模建築・DIY材・外構・土木仮設など、径級や等級の幅広さを武器に。乾燥・仕上げ・表面加工で単価を引き上げます✨。

5) カーボン×地域通貨:価値の二重取り
伐採→利用→再造林の循環が回っていることは、クレジットや補助金、公共調達の加点で“現金化”できます。自治体・企業と連携し、地場で“木を使う”プロジェクトを継続的に生み出しましょう️。

まとめ
人工林は“改善の余白”が大きい資産です。データで密度と品質、路網で搬出、用途で単価、カーボンで外部資金。課題を“事業機会”に反転させる視点が鍵となります。

第18回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~森林生態のキホン:多様性・更新・水循環 🐛💧~

「木を育て売る」前に、森が“どう回っているか”を掴むことは収益にも安全にも直結します。ここでは、更新(更新様式)、種多様性、階層構造、土壌と水循環、光環境、病害虫・風倒・雪害など、現場で判断に効くエッセンスをまとめます🔍🌿。

1) 更新様式:一斉か、連続か 🌱🌤️
皆伐更新は生産性が高く、路網・機械の効率が出ます。一方、連続林相・択伐は景観・生態・災害面でのメリットがあり、観光・教育・防災の複合価値を狙えます。地位指数・土壌・傾斜・需要で“現場最適”を選ぶ姿勢が要点です🧮📍。

2) 種多様性と混交化:レジリエンスのエンジン 🌳🍁
単一樹種は管理がシンプルですが、病害・乾燥・強風に弱い面も。広葉樹の混交や針広混交林の設計は、害虫の伝播抑制や根系の多様化で倒伏リスクを分散します。景観・観光価値の向上、紅葉・花期の魅力づけも副次効果🍂📸。

3) 光環境と階層:間伐の“効かせ方” ☀️📏
林冠の切り方次第で下層植生と更新力は激変します。過密なら生長停滞、過度の開放で乾燥・侵食リスク。ドローンや簡易分光での葉面積指数(LAI)推定、地上での胸高直径分布把握を組み合わせ、“光の設計”を定量化🔦🛰️。

4) 土壌・水:作業道づくりとも直結 ⛏️💦
団粒構造の維持、表層流の制御、路面排水、堆積物管理は“土砂災害×収益”の両面で重要。現場では雨前後の踏査、湧水の筋の把握、仮排水路・路肩の点検をルーティン化。植生の回復速度も収益の時間価値に影響します🕒🌧️。

5) 摂食者・病害虫・自然撹乱 🐞🌬️❄️
ニホンジカ等の食害は更新の最大リスク。防護柵・誘引・間伐タイミングの工夫で被害の“集中”を避けます。病害虫(マツ材線虫等)や台風・湿雪被害の確率分布を理解し、保険・備品・路網バックアップを整備🧯📦。

まとめ 🧭
生態の理解は“コストをかける場所とタイミング”の判断精度を高めます。混交・階層・水の制御で、強く美しい森づくりへ。観光・教育・カーボンの複合価値も同時に狙いましょう🌟。

第17回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~日本の林業の現在地とこれから ~

日本は国土の約7割が森林で、そのうち多くを戦後造成の人工林が占めます。素材生産量の回復、住宅以外の木造需要、脱炭素の追い風など、林業を取り巻く環境は静かに“構造転換”期へ。とはいえ、収益性・人材・所有者不明地・境界・路網など、課題は積層的。ここでは“いま”の全体像を、現場の意思決定に直結する視点で整理します✨。

1) 価値連鎖(バリューチェーン)を俯瞰する ➡️️➡️
林業の売上は「立木→素材→製材/集成→建築・内装→最終顧客」の連鎖で生まれます。各段階に“ボトルネック”があり、往々にして現場の努力だけでは利益を取り切れません。例えば、①伐出単価の見直し、②丸太の用途別仕分け精度、③乾燥・等級での価値付け、④販路の多角化(住宅材+非住宅、構造材+内装材)、⑤B2Bの継続契約化など、チェーン全体で“粗利が逃げない仕組み”を設計することが肝要です。

2) 供給サイド:路網×機械化×安全 ️
収益の基礎は路網密度と機械稼働率に宿ります。作業道の線形・勾配・路面強度、集材距離の短縮、高性能林業機械の適切な編成(ハーベスタ+フォワーダ等)、交替作業での稼働時間最大化、日報の見える化が鍵。安全は“コスト”ではなく“利益の前提”。労災・ヒヤリの削減は稼働の安定化と保険料の低減につながります。

3) 需要サイド:住宅一本足打法からの脱却 ️
人口動態と住宅着工の減少を直視しつつ、非住宅・中大規模木造、内装・什器、景観・土木(丸太土留め等)、バイオマス熱利用、カーボンクレジットまで、需要の“面”で捉える発想が必要です。CLTやLVL、内装のデザイン需要、オフィスの木質化など、設計者との早期連携で“用途設計”から逆算するのが勝ち筋。

4) 脱炭素と自然資本:二兎を追って二兎を得る ️
森林吸収源やJ-クレジット等の制度が進化し、木材利用のLCA評価も整備が進みます。吸収量“だけ”でなく、更新・間伐・混交化によるレジリエンス、流域治水や土砂災害軽減といった自然資本の価値も加点対象に。経営は「材積×単価」+「環境価値×売り先」のポートフォリオで最適化を図りましょう。

5) ヒト・組織:採用→育成→定着→多能工化 ‍♀️
採用では“給与だけでない”魅力の可視化(週休、装備、安全文化、キャリアパス)。育成はOJT+座学+デジタル教材、定着は評価制度と現場の心理的安全性に直結。チェンソー・集材・重機・測量・ドローンなどの多能工化は、小規模事業体の競争力を底上げします‍️。

6) 収支モデル:現場別の“型”を持つ
傾斜・路網・木齢・樹種の条件で、一番儲かる作業システムは変わります。丸太径級別の歩留まり表、搬出コスト曲線、稼働率、労務費、リスク余裕金まで“前計算”を徹底し、現場ごとにテンプレ化。赤字現場を作らない運用へ⚖️。

まとめ
林業は“長い時間”を扱う産業です。だからこそ、いま手元の1年計画と10年ビジョンを両持ちにする。需要の多角化・路網と機械・安全と人材・環境価値の組み合わせで、地域と会社の持続可能性を同時に高めていきましょう。

第16回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~森を守り、未来へつなぐために~


前回の「林業の歴史」に続いて、今回は「林業の鉄則」についてじっくりご紹介していきます。
林業は自然を相手にする仕事。だからこそ、安全・計画・継続性の3つの柱が非常に重要とされています。

それでは、林業の現場でプロたちが守り抜いている鉄則を見ていきましょう!


■ 鉄則①:安全第一 ― 命を守るための最優先事項

 

林業は、建設業や漁業と並んで最も危険な産業のひとつとされています。
チェーンソー、高所作業、伐採時の倒木、滑落事故など、少しの油断が命に関わるケースもあります。

そのため、現場では以下のような徹底した安全対策が取られています。

  • ヘルメット・防護服・安全靴の着用

  • 作業開始前のKY(危険予知)ミーティング

  • 伐倒方向の確認と退避経路の確保

  • 無線やホイッスルでの連携体制

林業において「慣れ」は最大の敵。毎回の作業においても“基本に忠実に、安全を最優先に”が鉄則です。


■ 鉄則②:計画伐採 ― 森を壊さず、育てる

 

木をただ切ればいい、というわけではありません。
林業の本質は「持続可能な伐採」にあります。

  • 何年生の木をいつ伐るか(主伐)

  • 間引き伐採(間伐)で森林の健全な成長を促す

  • 伐ったらすぐに新たな苗木を植える(再造林)

これらを全て長期スパンで計画するのが、施業計画というもの。10年、20年、50年先を見据えて山を管理していく。それが“林業の設計図”なのです。


■ 鉄則③:山と人のバランスを考える

 

林業は「自然との対話」。
木を切る量が多すぎても、放置しすぎてもいけません。

  • 間伐不足の山は、日が入らず、木がやせ細る

  • 伐採しすぎると、土砂崩れや水害のリスクが上がる

  • 動植物の生態系や水源保全も考慮が必要

だからこそ、**地域の地形・気候・生態系に合った“山の手入れ”**が必要不可欠。一本一本の木と向き合いながら、山全体の健康を見守るのが林業のプロの仕事です。


■ 鉄則④:木材の品質管理と流通も含めて“林業”

 

現代の林業では、伐った後の工程(選別・運搬・製材・販売)までを一体的に管理することが求められています。

  • 節の少ない高品質な材を選別

  • 乾燥・防虫処理などの工程管理

  • 地元ブランド材(例:吉野杉、秋田スギ)の価値を維持

つまり、林業は“木を伐るだけの仕事”ではなく、「育て、見極め、届ける」一貫したプロセスが必要なんです。


■ 鉄則⑤:次世代へのバトンを渡すこと

 

林業は、1年や2年で完結する仕事ではありません。
植えた苗木が育ち、立派な材として出荷できるまでに40年〜60年かかることも珍しくありません。

つまり、今の林業は、次の世代のために未来の森を設計する仕事なのです。

  • 若手育成と技術の継承

  • ICTやドローンなど新技術の活用

  • 地域との連携・山の価値の“見える化”

こうした新しい取り組みと古くからの知恵を融合させることで、林業はさらに魅力的で誇れる産業へと進化していきます。


■ 森に敬意を、仕事に誇りを

 

林業には「自然を壊す」のではなく、「自然と共に生きる」思想が息づいています。
そのために、安全・計画・環境・品質・継承の5つの鉄則が、今も昔も変わらず大切にされてきました。

木を伐る手には、未来への責任が宿っています。
私たちが今できることは、森に敬意を払いながら、その恵みを活かし、次の世代へしっかりとバトンを渡すことです。

第15回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~人と森の共生の歩み~

今回は「林業の歴史」にスポットを当て、私たち人間と森林との関わりがどのように発展してきたのか、時代を追ってご紹介します。

木材は、建築、道具、燃料、紙など、私たちの生活に欠かせない存在。
でもその裏には、木を育て、守り、伐って、また植える…そんな“林業の営み”がありました。
さあ、一緒に時空を越えて「森の仕事」の歴史をたどってみましょう!


■ 古代:自然林との共存と信仰

 

日本における林業の原点は、縄文時代にまでさかのぼります。
当時はまだ“林業”という概念はありませんでしたが、人々は自然林から木を伐り、家の柱や狩猟具、火を起こす薪などに活用していました。森は“生活の場”であり、同時に“神聖な場所”でもありました。

特に、神社の御神木や鎮守の森など、信仰と森が密接につながっていたのが日本の特徴です。単なる資源ではなく、共に生きる存在としての森。これが、日本の林業の根底に流れる思想といえるでしょう。


■ 中世~江戸時代:計画的な森林利用のはじまり

 

鎌倉~室町時代になると、人口が増加し、建築需要も増える中で、森林の乱伐が進行しました。これにより、一部の地域では山が禿げる「はげ山現象」も起こり、治水や農業にも悪影響を与えるようになります。

そこで、江戸時代になると幕府や藩が計画的な林業政策を打ち出します。

  • 伐ったら植える「循環型林業」

  • 山ごとに木を育てる「留山制度」

  • 村単位での植林と管理の義務化

特に徳川幕府の「御用林制度」では、良質な木材(特にヒノキ)を供給するための専用林が整備され、林業は国の重要な基盤産業となっていきました。


■ 近代:産業としての林業の確立

 

明治時代以降、日本は西洋式の近代国家を目指していく中で、林業も国家主導の産業へと進化していきます。

  • 明治政府による「官林・民林」の区分け

  • 全国でのスギ・ヒノキ植林政策(明治後半〜昭和初期)

  • 軍需産業に向けた山林資源の開発

昭和に入ると、戦争と戦後復興で木材需要が爆発的に増え、伐採と再造林が繰り返されるようになります。
特に1960年代からは、スギ・ヒノキの人工林が全国で一斉に拡大し、戦後林業の大転換期を迎えました。


■ 現代:課題と向き合い、森と再び手を結ぶ時代へ

 

1990年代以降、建築材の輸入自由化や住宅様式の変化などにより、国産材の需要は急激に減少。それと同時に、林業従事者の高齢化、後継者不足、放置林の増加といったさまざまな問題が顕在化しました。

しかし近年では、

  • 地産地消の木材活用

  • バイオマスエネルギーとしての木材利用

  • SDGsやカーボンニュートラルへの貢献

といった形で、林業が再び脚光を浴び始めています。
森林環境税の導入や、森林認証制度(FSC認証)も広がり、「育てて使い、また育てる」持続可能な林業が、改めて注目される時代へと進んでいます。


■ 森と共に生きるという選択

 

林業の歴史は、単に“木を伐る仕事”の変遷ではありません。
それは私たち人間が、自然とどう向き合い、どう共に生きていくかという問いかけの歴史でもあります。

自然を壊すのではなく、活かし、支え合う。
現代の林業は、これまでの知恵と反省を活かし、より健やかな森を未来に残していくための挑戦なのです。

第14回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~人材不足~

ということで、林業における人手不足の“実態”と“構造的な要因”、そして今後求められる解決策を、現場のリアルをもとに深く掘り下げていきます。

 

近年、国産材の需要拡大や脱炭素社会への貢献が注目されている林業ですが、それと同時に深刻な課題も浮き彫りになっています。

それが、人材不足

「作業員が高齢化して新規の担い手がいない…」
「若い人が定着しない…」
「求人を出しても応募がゼロ…」

こうした声は、北海道から九州まで、日本全国の森林組合や林業事業体から聞こえてきます。


林業における人材不足の現状データ


✅ 林業就業者は減少傾向、かつ高齢化が顕著

農林水産省の調査(令和5年版「森林・林業白書」)によると

  • 日本の林業就業者は約4.3万人(ピーク時の1/10以下)

  • 65歳以上が3割以上を占め、平均年齢は50代後半

  • 35歳未満の若手は全体の1割以下

若手就業者の新規参入はあるものの、定着率が低く5年後には半数以下になるというデータも存在します。


✅ 一方で「山の手入れ」は待ったなし

  • 全国の人工林のうち、約6割が伐採・手入れ適齢期(樹齢40年以上)

  • 特にスギ・ヒノキの成熟林が多く、今伐らなければ資源ロスや倒木リスクも

「人手がないから森林が放置される」現象が、災害・生態系の劣化・地域衰退にもつながっています。


なぜ林業は人材が集まりにくいのか?|構造的課題


❌ 1. 3K(キツい・キケン・キタナイ)のイメージ

  • 重機やチェーンソーを使った高所・傾斜地での作業

  • 季節や天候に左右される自然相手の仕事

  • ヒル・ハチ・熊などの野生動物や災害リスクも

この「3Kイメージ」が今でも若者や女性の参入を妨げている現実があります。


❌ 2. 収入・待遇の不安定さ

  • 月給制ではなく日給制や出来高制の現場も多く、収入が不安定

  • 年収ベースでは200〜300万円台が中心という地域も

  • 冬季や雨天で作業が止まると収入にも影響

「暮らしが成り立ちにくい」=「続けにくい」という悪循環。


❌ 3. キャリアパス・教育体制の未整備

  • 「見て覚える」OJTが中心で、体系だった研修やスキル認定が少ない

  • 森林施業プランナーやチェーンソー資格などはあるが、キャリアとしての明確なステップが描けない

  • 地域によって研修・実習の充実度に差

他産業に比べ、「育てるしくみ」が遅れているのが現状です。


❌ 4. 地域コミュニティとの距離感・孤立感

  • 山間部での作業=都会出身者には孤独感や文化ギャップが大きい

  • 地元との関係づくりや言葉の壁、閉鎖的な地域も少なくない

  • 移住型新規就業者が「定着しづらい」要因にも

️ 「林業はしたいけど、地域になじめるか不安」という声も多く聞かれます。


今、林業に必要な人材とは?


多様なスキルを持つ「新しい担い手」

タイプ 必要な役割
現場オペレーター 伐採・搬出・高性能林業機械の操作
森林マネージャー 森林経営計画・施業設計・資源管理
ICT担当 ドローン・GIS・林業クラウドの活用
地域コーディネーター 地域と林業をつなぐコミュニケーション役

「ただ木を切る」だけでなく、林業も“総合知識産業”へと進化しつつあります。


女性や移住者、異業種出身者が活躍する時代へ

  • 女性林業士による森林教育・観光林業の企画

  • 移住者が森林施業プランナーとして起業する事例

  • 建設業・IT業からの転職者が林業デジタル化を牽引

「林業経験ゼロでも、地域や技術を活かして活躍できる」未来が現実に広がっています。


人材不足を打開する取り組みと可能性


✅ 1. 新規就業支援(緑の雇用制度)

  • 国が実施する「緑の雇用」制度により、研修+給与補助を実施

  • 各都道府県が林業アカデミーや研修施設を設置し、3年で即戦力化を目指す

  • 研修中に必要な資格(チェーンソー・刈払機・伐倒技術など)を習得可能

林業の「入り口」は、徐々に整備されつつあります。


✅ 2. ICT導入とスマート林業の加速

  • ドローンでの森林資源調査、伐採計画の可視化

  • GPS搭載の重機による作業精度向上

  • 森林クラウドでの施業管理・情報共有

重労働の軽減と効率化により、「働きやすい林業」へ転換できる可能性があります。


✅ 3. 教育機関・高校との連携強化

  • 林業科のある高校、農林大学校、職業訓練校との連携を強化

  • 高校生のインターンシップ、山林実習、森林ボランティアなどの受け入れ体制を整備

  • 小中学校からの森林教育で、地元愛・職業理解を深める

「林業=選ばれる仕事」として認識されるためには、若年層への種まきが不可欠です。


✅ 4. 地域と暮らしを支える仕組みづくり

  • 林業就業者向けの住居支援・家族支援・移住サポートの整備

  • 地域住民との交流会・山の案内人・観光との連携

  • 地域に根差した「新しい林業ライフ」のモデル化

ただ「働く」だけでなく、「暮らす・生きる林業」の価値が求められています。


林業の未来は“人”にかかっている


森林を育て、守り、つなぐのは「人の手」です。

しかしその手が足りなければ、
✅ 森は放置され、
✅ 災害リスクが高まり、
✅ 森林資源が活かされず、
✅ 地域も衰退していく。

逆に言えば、「人が戻れば森も地域も再生する」とも言えるのです。

林業の未来は、決して暗くありません。
多様な人材が関わり、働きやすく、やりがいのある仕事へと変えるチャンスが、今まさに訪れています。

 

第13回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~困難~

ということで、今回は、林業において特に育成が難しいとされる樹木を中心に、その理由や課題、研究的な取り組み、今後の可能性までを深く掘り下げてご紹介!

 

日本の森林は約7割が人工林や二次林といわれており、その大半がスギ・ヒノキなどの経済林で占められています。しかし、近年では生物多様性や気候変動対応、国産広葉樹の需要増などにより、従来扱いづらかった樹木の育成にも注目が集まっています。

しかし中には、

「発芽率が低い」
「成長が遅すぎる」
「病害虫に極端に弱い」
「伐採後の再生が困難」

といった理由で、育成が難しい“繊細な樹木たち”が存在します。


育成が難しいとは?林業的な“難しさ”の定義


「育成が難しい」とは、単に成長が遅いということではありません。林業的には、以下のような要因が複合的に絡んでいます。

✅ 育成が難しい樹木に共通する特徴

要因 内容
発芽・育苗の困難さ 種子が少ない/発芽率が悪い/発芽時期が極端に限定されている
成長速度の遅さ 林業経済上“採算が取れるまでに数十年以上かかる”
土壌・環境の選り好み 日照・水分・土壌pHなどに極端に敏感
病害虫への弱さ 風倒・腐朽菌・特定病虫害に非常に弱い
人工植林や単独育成に不向き 自然更新を主とするため管理が困難

🌲 これらは、経済林としての価値や管理コストに大きく影響し、結果として「林業的に敬遠されやすい」という現実があります。


林業において育成が難しいとされる代表的な樹種


🌳 クヌギ(ブナ科)

  • 用途:炭材(特に備長炭)、椎茸原木など

  • 難しさの理由

    • 実生からの発芽率が低く、どんぐりの寿命が非常に短い(発芽までに乾燥するとほぼ死滅)

    • 成長に時間がかかり、炭用材にするには30年以上が必要

    • 台風による風倒被害を受けやすい

📝 現在では自然更新(伐採→萌芽更新)に頼るケースが多く、人工造林は極めて手間がかかる樹種


🌲 ブナ(ブナ科)

  • 用途:家具材・内装材・水源涵養林として重要

  • 難しさの理由

    • 種子の豊作が数年に1度と不定期

    • 陽樹(光を多く必要とする)でありながら、初期には日陰でしか育たないという“光要求の逆転現象”あり

    • 一定の湿潤気候・高冷地を必要とする

🧪 近年ではブナの天然更新・自然遷移を活かした「長伐期施業」が提案されていますが、収益性が極めて低い点が課題です。


🌲 ミズナラ(ブナ科)

  • 用途:ウイスキー樽・家具・フローリング材など

  • 難しさの理由

    • 育成初期にシカによる食害を受けやすい(若木が好物)

    • 森林内での競争に弱く、広葉樹林のなかで優占しにくい

    • 湿地や高標高地域に生育が限られ、大規模人工林には不向き

📦 近年のウイスキーブームで需要が高まっていますが、供給が追いつかず、希少化が進んでいます。


🌲 ケヤキ(ニレ科)

  • 用途:神社仏閣・高級家具・彫刻材など

  • 難しさの理由

    • 成長速度が極端に遅い(樹齢80年でも直径30cm以下)

    • 根の張り方が広く、間伐・移植が困難

    • ケヤキハフクロフシという病害が蔓延しやすい

🏯 文化財建築などの需要は根強いものの、現代の短期サイクル林業では扱いづらい代表的な広葉樹です。


なぜ今、難しい樹木の育成が見直されているのか?


✅ 1. 脱スギ・ヒノキ依存の流れ

  • 戦後植林されたスギ・ヒノキは大量に成熟期を迎えつつあるが、需要減少と価格下落が続いている

  • 一方で、広葉樹や“地域らしい樹種”の見直しが進み、地域ブランド材へのニーズが上昇中

🌱 多様な木材利用へのニーズが「難しいけど価値の高い樹木」を求め始めているのです。


✅ 2. 気候変動への対応

  • スギなど一部樹種は高温・乾燥に弱く、将来的に生育地が縮小する可能性あり

  • 一部広葉樹(例:ミズナラ、シデなど)は温暖化耐性に優れ、将来の主役候補

🌍 “難しいが、今後の森林の多様性と気候耐性を支える存在”として注目されています。


✅ 3. 観光・教育・生態系の観点

  • 高齢化により素材生産以外の林業(森林教育・観光林業など)への移行も視野に

  • 難育成の樹木は生物多様性や景観価値が高く、地域資源として活用しやすい

🍁 「育てにくさ」=「希少性」=「新しい価値」に転換されつつあります。


難しい樹木を育てるための工夫・研究動向


✅ ・種子保存と苗木技術の向上

  • 超低温貯蔵(−80℃)による種子寿命の延長

  • 微細気象制御ハウスでの高温・乾燥ストレス対策型育苗

  • 遺伝子情報を活用した発芽率向上の研究


✅ ・混植造林と自然遷移を活かした森林経営

  • 難育成樹種をスギ・広葉樹・針葉樹と混植し、互いに生育を助け合う構成に

  • 伐採後は更新せずに自然遷移に任せる「放置更新」とのハイブリッド運用も検討中


✅ ・ドローン・リモートセンシングの導入

  • 小面積でも衛星・ドローンで成長データをモニタリング

  • 育成困難地での高精度間伐・下草管理の効率化

🌲「手間をかけずに、難しい木を守る」技術が今、加速度的に進化しています。


難しいからこそ、未来に残す価値がある


育成が難しい樹木には、
✔ 繊細な生態
✔ 長い成長時間
✔ 高い管理負担
といった“育てにくさ”があります。

しかし、だからこそ彼らは、

✅ 森林の多様性を支え
✅ 地域文化や伝統工芸を守り
✅ 地球環境の変化に耐える存在

として、未来の林業を支える“希望の樹”でもあるのです。

林業の在り方が変わる今こそ、私たちは「育てにくい木」にこそ、もう一度光を当てる時なのかもしれません。

第12回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

 

~育成年数~

ということで、今回は、日本の伝統産業であり、同時に未来の環境を支える「林業」の現場に目を向け、一本の樹木が育つまでにどれほどの時間と工程がかかるのかを深掘りしていきます♪

 

「木」は自然に生えるもの。でも、林業としての木=利用するための木材を育てるという視点では、実は膨大な手間と長い年月が必要なのです。


◆ 林業における「樹木の一生」とは?

林業における樹木の育成とは、単に「植えて放置する」ものではなく、計画的に育て、管理し、伐採して活用し、また植えるという循環型の営みです。

特に日本の林業では、スギ(杉)やヒノキ(檜)などの針葉樹人工林が中心で、その成長サイクルはおよそ50年〜80年にも及びます。


◆ 樹木が育つまでの主な工程と年数

林業における育成は、以下のような段階を経て進みます。


【1】苗木の育成(0〜2年)

森林組合や苗木農家で、種から苗を育てる段階。強風や乾燥、病害虫に耐えられる丈夫な苗にするため、手厚く管理されます。

  • 代表的な樹種:スギ、ヒノキ、カラマツなど

  • 苗木の高さ:約20〜30cmで植林適齢

苗木1本にかかるコストは数百円程度。だがこの「初期投資」が、50年後の材価に大きく影響する。


【2】植林(2〜3年目)

伐採後の山や新たに整備された山に、苗木を一定の間隔で手作業で植える作業。1ヘクタールあたり1,000〜3,000本が植えられます。

  • 植林時期:春または秋(気温・雨量に左右されにくい)

  • 重要性:地表を覆い、保水・土砂流出防止にも貢献


✂️【3】下刈り(3〜10年目)

苗木の成長を妨げる雑草や低木を刈り取る作業。機械が入れない急斜面での手作業が中心で、最も過酷な工程とも言われています。

  • 年に1〜2回必要

  • 手入れしないと苗木が光を奪われて枯れる


【4】間伐(15〜40年目)

木々が育ち、林内が密集してくると光や養分の奪い合いが起こります。そのため、成長の良い木を残して他を間引く「間伐」を行います。

  • 第一次間伐:15〜20年目

  • 第二次間伐:30〜40年目(約半数を伐採)

間伐は森林の健全な成長に不可欠であり、間伐材の有効活用(バイオマス発電・木質チップ)が注目されています。


【5】主伐(50〜80年目)

最終的に、木材として活用するために伐採される段階です。日本の人工林は戦後に植えられた木が多く、今まさに伐採適齢期を迎えています。

  • スギ:50〜60年で柱材に

  • ヒノキ:60〜80年で構造材や造作材に

主伐後は、再び植林を行い、森林の循環をつなげることが林業の基本です。


◆ 年数の目安(代表的な木)

樹種 主伐までの年数 特徴
スギ 約50〜60年 柔らかく軽量、建材・柱材向き
ヒノキ 約60〜80年 耐久性・香りに優れ、人気材
カラマツ 約40〜50年 高地向き、土木材にも利用
コナラ 約30〜40年 薪炭材、広葉樹林再生に使用

◆ 森を育てるということは、時間を受け継ぐということ

林業は、1年や2年で成果が出るものではありません。今植えた木が使われるのは、自分の孫の世代かもしれない。

そのため、林業は「100年の計を実行する仕事」と呼ばれています。

目先の利益ではなく、未来の環境・経済・文化を見据える――それが林業です。


◆ これからの林業に求められる視点

◉ SDGs・脱炭素社会との連動

  • 森林によるCO₂吸収の価値が再評価

  • 持続可能な木材利用(FSC認証など)が国際的な流れに

◉ テクノロジーの導入

  • ドローンによる植林・伐採計画の最適化

  • AIによる成長予測や劣化診断

  • リモートセンシングで森林管理の省力化

◉ 人材と継承の課題

  • 若手林業者の確保が急務

  • 地域住民と連携した「森林の見える化」による理解促進


◆ 森をつくるのは「手」と「時間」

一本の木が立派に育つには、何十年もの時間と、何千回もの人の手が必要です。伐って終わりではなく、伐ってからが始まり。林業とは、自然と人間が共同でつくる、長い物語です。

「木を植える」という行為は、「未来に贈り物をすること」
それは、今の私たちにこそ求められている選択かもしれません。

 

第11回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

 

~樹木の効果~

ということで、ここでは、今回は、身近にありながらその力を見過ごしがちな存在、「樹木(じゅもく)」が私たちにもたらす多彩な効果についてご紹介します♪

 

公園、森、庭先、街路樹……。無言で佇む木々は、ただ景観を美しくするだけでなく、私たちの心身の健康、環境、文化、社会にまで深く影響を与えているのです。


◆ 1. 空気をきれいにする「天然の浄化装置」

樹木の最もよく知られた効果の一つが、二酸化炭素(CO₂)の吸収と酸素の供給です。光合成によって大気中のCO₂を吸収し、酸素を放出することで、私たちの呼吸を支えてくれています。

🌿 特にCO₂吸収量が多い木

  • クスノキ(樟):日本各地の神社などに植えられる大樹。葉が茂り、浄化力が高い。

  • スギ(杉):針葉樹の中でも成長が早く、森林造成にも活用される。

  • ケヤキ(欅):都市部の街路樹にも多く、緑陰効果も高い。

🌬️「一本の樹木が、1年間で人間2人分の酸素を供給する」とも言われています。


◆ 2. 心を癒す「グリーンセラピー」の効果

緑に囲まれると「ほっとする」「気分が落ち着く」と感じたことはありませんか?これは科学的にも証明されていて、樹木はストレス軽減や心身のリラックスに貢献していることがわかっています。

🍃 森林浴の効果(森林医学より)

  • 血圧の低下

  • 脈拍の安定

  • 自律神経の調整

  • ストレスホルモン(コルチゾール)の低下

🌲 精油成分(フィトンチッド)の作用

  • スギ、ヒノキなどが放つ香気成分は、抗菌・リラックス効果があり、アロマテラピーにも活用されています。

🍀 木の香りを深く吸い込むだけで、私たちの身体は安心信号を受け取っているのです。


◆ 3. 温暖化対策・災害対策としての役割

🌞 ヒートアイランド現象の緩和

都市部では、アスファルトの蓄熱により気温が上昇する「ヒートアイランド現象」が深刻です。街路樹や屋上緑化により、日陰をつくり、気温を下げる効果があります。

  • イチョウ(銀杏):葉の密度が高く、強い日差しを遮る。

  • ナンキンハゼ:都市の景観を美しくしつつ、日差しを遮蔽。

🌊 土砂災害・洪水の防止

樹木の根は土壌をしっかりと保持し、大雨や地滑りを防ぐ天然の「ダム機能」を果たします。森林の保水力は、治水対策としても極めて重要です。


◆ 4. 生態系を支える「命のネットワーク」

一本の樹木には、数百種以上の昆虫・鳥・菌類が共生しています。たとえば、ナラの木にはどんぐりを食べるリス、カブトムシ、コナラ菌などが集まります。

樹木は、ただ立っているだけで、多くの生命を育むプラットフォームなのです。


◆ 5. 文化・信仰・記憶と結びついた木々

⛩️ 信仰の対象としての樹木

  • 御神木(ごしんぼく):神社や寺院で大切にされる巨樹は、神が宿るとされる。

  • 桜(サクラ):日本文化を象徴する花木。季節の節目を知らせるとともに、はかなさや美しさの象徴とされる。

  • 梅(ウメ):厳しい冬に耐え、春を告げる縁起のよい木。

📚 記憶を刻む木

  • 被爆地・広島の「アオギリ」や、東日本大震災の「奇跡の一本松」など、災害や歴史を語り継ぐ存在として、木は人の記憶に深く刻まれます。


◆ 6. 木材としての恩恵と未来の素材

私たちが使う家具や家屋、紙製品にも、木が欠かせません。さらに、最近ではカーボンニュートラルな建材・プラスチック代替素材としての研究も進んでいます。

  • 竹や間伐材を使った食器やストロー

  • 木製パッケージやバイオ樹脂製品

木は、私たちの未来のサステナブルな社会づくりのパートナーとして、再評価されています。


◆ 「木を知ることは、人を知ること」

樹木は黙って立っています。でもその存在が、空気を浄化し、私たちの心を癒し、災害を防ぎ、命をつなぎ、文化をつくるという、計り知れない価値を生み出しているのです。

🌳 一本の木の下に立ってみてください。
その静けさの中に、自然と人間が共に生きてきた長い時間の声が、きっと聞こえてくるはずです。