-
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー
投稿日カレンダー

皆さんこんにちは!
株式会社晋林業、更新担当の中西です。
~森林経営計画のつくり方:収支とスケジュール 🗓️💹~
森林経営計画は“申請書”ではなく経営の設計図。現場で迷わない導線と、資金が詰まらないキャッシュフロー、そして安全と環境の前提を一枚の地図に重ねることが本質です。
本回では、(1)棚卸し→(2)路網→(3)施業スケジュール→(4)人員・機械アサイン→(5)原価と収支→(6)リスク→(7)監視KPI→(8)合意形成、までをテンプレ化します。🌲🧭
0) 目的とアウトプット 🎯
目的:①安全に稼働 ②赤字現場を作らない ③再造林率を上げる ④地域の納得を得る。
アウトプット:A4×10枚以内の計画書セット(GIS地図、スケジュール、原価表、KPI、合意書式)。長い=良いではありません。
1) リソース棚卸し:数字と位置をそろえる 🧮🗺️
林分台帳:林齢・樹種・本数密度・材積(m³/ha)・地位指数・傾斜・作業難易度。
制約レイヤー:保安林区分、河川・湿地、文化財、鳥獣保護区、急斜面、法面崩壊履歴、通信圏外域。
境界:既存杭・石標・過去の立会記録・私設境界。写真と座標で証跡化。
品質把握:胸高直径分布(D級別)、枝下高、曲がり、病害の有無。歩留まり表の初期値を作る。
TIP:棚卸しは“1回完璧”ではなく改善サイクル。現場ごとに観測→台帳更新→次の見積精度UP📈。
2) 路網計画:“通す”のではなく“壊れない”を設計 🛣️📐
目標:集材距離の平均100m以下、旋回Rと待避所で交差ゼロ導線。
設計:縦断勾配(作業道8–12%/林道6–10%)、横断勾配2–4%、カーブR≥12–15m、横断溝30–50m毎、湧水の逃げ道確保。
材料・施工:路床転圧回数記録、クラッシャー粒度、法面マット仮撒き。雨期前倒しで排水先行。
維持:大雨後24h点検、詰まりリストの定期清掃。
3) 施業スケジュール:年→月→週→日へ分解 ⏱️
10年鳥瞰:間伐→主伐→更新(植栽・下刈・防護)を流域単位で配置。**作業の“連続性”**を意識。
年間計画:雨期・雪期・狩猟期・監査時期・補助採択時期をカレンダー化。許認可の待ち時間を工程に組み込む。
月次→週次:現場の切替タイミング、機械の整備週、教育日(安全・目立て・ドローン)。
日次:TBM(朝礼)のチェック項目、退避ポケットの設定、無線チャンネル、中止基準(降雨・視程)。
4) 人員と機械のアサイン:最小の班で最大の出来高 👷♀️⚙️
標準班:ハーベスタ1+フォワーダ1+補助1(3名)/ヤーダ型は集材2+土場1など。交替要員の確保で稼働1.2倍。
レイアウト:土場2面(処理用/積込用)で待ち時間削減。交差ゼロを原則に。
保守:日次→油水・グリス・センサー、週次→ローラ・ホース、月次→油圧・フィルタ。壊れる前に止める。
5) 原価と収支:式と前提を固定する 💴
時間原価:機械償却+金利+保険+保守+燃料+人件(円/h)。
搬出原価:集材距離・傾斜・路面強度・雨天率の係数で補正。
出来高:1サイクル材積(m³)÷サイクル時間(min)×60×稼働率。
現場採算:収入(用途別単価×材積)−(稼働時間×時間原価)−運搬−再造林費−保険。赤字ラインを事前に計算。
投資採算:路網・機械のNPV/IRR。例:路網90→120m/haで原価▲○%なら投資回収○年と明示。
6) リスク管理:トリガーと代替案を併記 🛡️
自然:大雨・台風・降雪・高温。中止トリガー(mm/h・WBGT)と代替作業(整備・仕分け)。
安全:60分行動計画(停止→通報→救急→現場保存)。
市場:単価下落時の用途転換(内装材・景観・熱)。
人員:欠員時の2in1配置(重機+チェンソー)で代替。
7) モニタリング:KPIで学習する 📊
KPI:出来高、搬出原価、稼働率、待ち時間比率、納期遵守、安全指標(ヒヤリ・休業災害)、再造林率。
見える化:現場ホワイトボード+月次ダッシュボード。赤信号の定義を数値で固定。
監査:写真台帳(出荷・排水・境界杭・PPE)、認証/補助の証憑をロットで紐付け。
8) 合意形成・近隣対応 🤝
1枚説明:工程、時間帯、車両台数、土埃・騒音対策、緊急連絡先。
立会い:境界・伐倒方向・通行。ドローン斜め写真でわかる化。
クレーム対応:24h以内の初動、写真と記録で再発防止へ。
ケーススタディ:6ha急傾斜の主伐更新 🧪
条件:傾斜25°、路網密度60m/ha、集材距離120m、D24中心。
計画:ヤーダ+プロセッサ、土場2面、横断溝40m毎、待避所80m毎。
結果見込み:出来高+18%、搬出原価▲9%、納期遵守98%、再造林率100%。
現場で今日からできる3つ ✅
現場KPIボード(出来高・待ち比率・納期・安全)を作って朝礼で共有。
中止基準(降雨・WBGT・視程)を紙と無線で周知。
路網図に排水・待避・危険レイヤーを追加し、写真台帳と連携。
皆さんこんにちは!
株式会社晋林業、更新担当の中西です。
~スギヒノキ人工林の課題とチャンス ~
戦後造成のスギ・ヒノキ人工林は、資源量のピークに向かう一方で、手入れ遅れ・過密・労働力不足・搬出コスト・花粉・風倒リスクなど、多岐の課題を抱えます。しかし“課題がある=価値創造の余地が大きい”ということ。現実的な打ち手を整理します️。
1) 過密→品質停滞→単価低迷の連鎖を断つ ✂️
間伐の遅れは年輪幅・枝下高・曲がり・節に直結し、JAS等級の壁になります。計測のデジタル化(胸高直径分布の自動化、ドローン写真測量、LiDAR)で“証拠を持って”最適密度へ。歩留まり表を現場で更新し続けましょう️。
2) 路網×機械化で搬出コストを削減 ️
路網密度が低いと集材距離が伸び、コストと事故リスクが増大。路面排水・カーブ半径・待避所などの標準仕様を持ち、フォワーダやスイングヤーダと整合する線形で設計。現場の“車線幅”と“旋回”を最初に決めるのがコツです。
3) 花粉・風倒・乾燥化への適応 ️️
品種と更新様式の見直し、混交化、列状間伐、林縁の防風帯整備でリスクを分散。乾燥ストレス増大には下層植生の維持と土壌有機物の回復が効きます。被害前提の“レジリエンス設計”で、保険・備蓄・バックアップ路網も整えます️。
4) 用途開拓:構造材+内装・家具・景観へ ️
節や色を“欠点”ではなく“意匠”に変えるのが2020年代の潮流。内装パネル・什器・小規模建築・DIY材・外構・土木仮設など、径級や等級の幅広さを武器に。乾燥・仕上げ・表面加工で単価を引き上げます✨。
5) カーボン×地域通貨:価値の二重取り
伐採→利用→再造林の循環が回っていることは、クレジットや補助金、公共調達の加点で“現金化”できます。自治体・企業と連携し、地場で“木を使う”プロジェクトを継続的に生み出しましょう️。
まとめ
人工林は“改善の余白”が大きい資産です。データで密度と品質、路網で搬出、用途で単価、カーボンで外部資金。課題を“事業機会”に反転させる視点が鍵となります。
皆さんこんにちは!
株式会社晋林業、更新担当の中西です。
~森林生態のキホン:多様性・更新・水循環 🐛💧~
「木を育て売る」前に、森が“どう回っているか”を掴むことは収益にも安全にも直結します。ここでは、更新(更新様式)、種多様性、階層構造、土壌と水循環、光環境、病害虫・風倒・雪害など、現場で判断に効くエッセンスをまとめます🔍🌿。
1) 更新様式:一斉か、連続か 🌱🌤️
皆伐更新は生産性が高く、路網・機械の効率が出ます。一方、連続林相・択伐は景観・生態・災害面でのメリットがあり、観光・教育・防災の複合価値を狙えます。地位指数・土壌・傾斜・需要で“現場最適”を選ぶ姿勢が要点です🧮📍。
2) 種多様性と混交化:レジリエンスのエンジン 🌳🍁
単一樹種は管理がシンプルですが、病害・乾燥・強風に弱い面も。広葉樹の混交や針広混交林の設計は、害虫の伝播抑制や根系の多様化で倒伏リスクを分散します。景観・観光価値の向上、紅葉・花期の魅力づけも副次効果🍂📸。
3) 光環境と階層:間伐の“効かせ方” ☀️📏
林冠の切り方次第で下層植生と更新力は激変します。過密なら生長停滞、過度の開放で乾燥・侵食リスク。ドローンや簡易分光での葉面積指数(LAI)推定、地上での胸高直径分布把握を組み合わせ、“光の設計”を定量化🔦🛰️。
4) 土壌・水:作業道づくりとも直結 ⛏️💦
団粒構造の維持、表層流の制御、路面排水、堆積物管理は“土砂災害×収益”の両面で重要。現場では雨前後の踏査、湧水の筋の把握、仮排水路・路肩の点検をルーティン化。植生の回復速度も収益の時間価値に影響します🕒🌧️。
5) 摂食者・病害虫・自然撹乱 🐞🌬️❄️
ニホンジカ等の食害は更新の最大リスク。防護柵・誘引・間伐タイミングの工夫で被害の“集中”を避けます。病害虫(マツ材線虫等)や台風・湿雪被害の確率分布を理解し、保険・備品・路網バックアップを整備🧯📦。
まとめ 🧭
生態の理解は“コストをかける場所とタイミング”の判断精度を高めます。混交・階層・水の制御で、強く美しい森づくりへ。観光・教育・カーボンの複合価値も同時に狙いましょう🌟。
皆さんこんにちは!
株式会社晋林業、更新担当の中西です。
~日本の林業の現在地とこれから ~
日本は国土の約7割が森林で、そのうち多くを戦後造成の人工林が占めます。素材生産量の回復、住宅以外の木造需要、脱炭素の追い風など、林業を取り巻く環境は静かに“構造転換”期へ。とはいえ、収益性・人材・所有者不明地・境界・路網など、課題は積層的。ここでは“いま”の全体像を、現場の意思決定に直結する視点で整理します✨。
1) 価値連鎖(バリューチェーン)を俯瞰する ➡️️➡️
林業の売上は「立木→素材→製材/集成→建築・内装→最終顧客」の連鎖で生まれます。各段階に“ボトルネック”があり、往々にして現場の努力だけでは利益を取り切れません。例えば、①伐出単価の見直し、②丸太の用途別仕分け精度、③乾燥・等級での価値付け、④販路の多角化(住宅材+非住宅、構造材+内装材)、⑤B2Bの継続契約化など、チェーン全体で“粗利が逃げない仕組み”を設計することが肝要です。
2) 供給サイド:路網×機械化×安全 ️
収益の基礎は路網密度と機械稼働率に宿ります。作業道の線形・勾配・路面強度、集材距離の短縮、高性能林業機械の適切な編成(ハーベスタ+フォワーダ等)、交替作業での稼働時間最大化、日報の見える化が鍵。安全は“コスト”ではなく“利益の前提”。労災・ヒヤリの削減は稼働の安定化と保険料の低減につながります。
3) 需要サイド:住宅一本足打法からの脱却 ️
人口動態と住宅着工の減少を直視しつつ、非住宅・中大規模木造、内装・什器、景観・土木(丸太土留め等)、バイオマス熱利用、カーボンクレジットまで、需要の“面”で捉える発想が必要です。CLTやLVL、内装のデザイン需要、オフィスの木質化など、設計者との早期連携で“用途設計”から逆算するのが勝ち筋。
4) 脱炭素と自然資本:二兎を追って二兎を得る ️
森林吸収源やJ-クレジット等の制度が進化し、木材利用のLCA評価も整備が進みます。吸収量“だけ”でなく、更新・間伐・混交化によるレジリエンス、流域治水や土砂災害軽減といった自然資本の価値も加点対象に。経営は「材積×単価」+「環境価値×売り先」のポートフォリオで最適化を図りましょう。
5) ヒト・組織:採用→育成→定着→多能工化 ♀️
採用では“給与だけでない”魅力の可視化(週休、装備、安全文化、キャリアパス)。育成はOJT+座学+デジタル教材、定着は評価制度と現場の心理的安全性に直結。チェンソー・集材・重機・測量・ドローンなどの多能工化は、小規模事業体の競争力を底上げします️。
6) 収支モデル:現場別の“型”を持つ
傾斜・路網・木齢・樹種の条件で、一番儲かる作業システムは変わります。丸太径級別の歩留まり表、搬出コスト曲線、稼働率、労務費、リスク余裕金まで“前計算”を徹底し、現場ごとにテンプレ化。赤字現場を作らない運用へ⚖️。
まとめ
林業は“長い時間”を扱う産業です。だからこそ、いま手元の1年計画と10年ビジョンを両持ちにする。需要の多角化・路網と機械・安全と人材・環境価値の組み合わせで、地域と会社の持続可能性を同時に高めていきましょう。