ブログ

第25回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

 

チェンソー安全とメンテ:刃先が会社を守る

 

チェンソーは最も身近で、最も事故率の高い機械。
刃の状態=生産性=安全性。
PPEから刃研ぎ・燃料・点検・伐倒・キックバック対策まで、
「事故ゼロと長寿命」を両立する現場基準をつくります。


① PPE(個人防護具)と基本姿勢

  • 必須装備
    チャップス(または防護ズボン)
    ⛑️ 安全ヘルメット(遮音シールド付)
    ✋ 防振手袋
    安全靴
    ゴーグル

  • 姿勢の基本

    • 腰を落とし、二点支持+体幹安定

    • 片手操作禁止!

    • 退避方向・障害物を先に整理


② キックバックの理解と回避

  • 原因:ガイドバー先端上部(危険域)が木材に噛む。

  • 対策

    • 上方からの切り込み禁止

    • くさび併用で逃げ代を確保

    • チェンブレーキ常用

    • 前足に重心を乗せすぎない

⚠️ キックバックは一瞬で顔面・上半身を襲う。
「刃を木に当てない角度」を体に覚えさせることが最大の防御。


③ 伐倒計画:“切る前の9割”

  1. 作業域整理(枝払・足元整備)

  2. 狙い方向決定(風・傾き・樹冠・障害物)

  3. 退避路2本確保(45°後方)

  4. 受け口:角度45°、深さ=樹径の1/4〜1/5

  5. 追い口:ヒンジ幅1/10〜1/8、水平方向に
     → くさび併用で押し出す

「倒す前の確認に5分、倒すのは30秒」──これがプロ。


④ 刃研ぎ:角度とデプスが命 ✨

  • 目立て角度:25°前後(チェン仕様に従う)

  • デプスゲージ:0.6〜0.8mm基準

    • 深すぎ → キックバック・振動増

    • 浅すぎ → 切れ味低下

  • 手順
    1️⃣ 左右均等に同回数研ぐ
    2️⃣ デプス調整
    3️⃣ バリ落とし
    4️⃣ チェン向き・テンション確認

研ぎは“力”より“角度”。研ぐ時間で会社のリスクが変わる。


⑤ 燃料・潤滑・冷却 ️

  • 燃料:2スト混合 50:1 目安
    → 長期保管で分離・劣化に注意

  • チェンオイル:燃料補給と同時に必ず補充
    → 枯渇=焼き付き即故障

  • 冷却清掃:シュラウド・フィン・エアフィルタを毎日清掃


⑥ 点検・整備スケジュール ‍

頻度 主な点検項目
日次 チェンテンション/バー片減り/スプロケット摩耗/ブレーキ動作/ナット緩み
週次 バー裏返し/クラッチ清掃/スターター紐チェック
月次 点火プラグ/燃料フィルタ/マフラーのカーボン除去

点検結果は「自分の名で残す」──責任が安全を生む。


⑦ 材に応じた切断:繊維と応力を読む

  • 張力側 → 圧縮側へ切る

  • 順序を誤るとはさまれ・バー噛み込み事故の原因

  • 曲がり・反り・根返りのクセを読む

応力を読める作業者=“刃を止めない人”。


⑧ 事故事例 → 対策

事故 原因 対策
キックバック 受け口浅い/追い口で先端刺さる 受け口角度45°・深さ基準厳守+くさび準備
はさまれ 張力側を後回し 応力読み+補助切り・くさび

⚠️ 事故の9割は「作業手順省略」と「刃研ぎ不足」。


⑨ 教育と資格:OJT+動画+ドリル

  • 3段階教材構成

    • 5分動画 × 10本(基本〜応用)

    • 現場ドリル × 5

    • 目立て実習(講師・先輩チェック)

  • 対象別:新入/中堅/リーダーで内容を変える


✅ 現場で今日からできる3つ

1️⃣ 受け口・追い口寸法をヘルメット内側に貼る
2️⃣ 目立て工具を個人一式化し、管理責任を明確化
3️⃣ 退避路をテープやスプレーで可視化してから切る