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皆さんこんにちは!
株式会社晋林業、更新担当の中西です。
~伐採・集材・搬出:作業システム最適化 ~
現場の利益は“1本あたりの単価”だけでなく、“1時間あたりの出来高×ムダの少なさ”で決まります。
伐採→枝払い/玉切り→集材→土場(仮置き)→積込→運搬までを一つの作業システムとして最適化し、サイクルタイム短縮と品質(仕分け精度)を両立させるのが本回のテーマです。地形・樹種・径級・路網・機械・人員の“組み合わせ”を具体例で掘り下げます。
1) 現場条件の読み解き:最初の30分が利益を左右する ⏱️️
• 傾斜・地耐力:地耐力の弱い場所では履帯幅の広い機械、湿地帯はマット敷設を想定。平均傾斜15〜25°を境に地引き中心か簡易架線/スイングヤーダかの判断が変わります。
• 集材距離:集材距離は100mを超えると急激にコストが上がりがち。路網の増設・土場位置の再設計で距離短縮を最優先に。
• 径級分布:胸高直径20〜24cm中心か、24〜28cm中心かでハーベスタのヘッド設定や切断長の最適点が変化。歩留まり表を現地で更新しましょう。
• 制約条件:保安林・渓流・緩衝帯・文化財・私有地境界。“やってはいけない線”を最初に地図と現地杭で可視化し、後戻りをゼロにします。
2) 作業システムの“型”を持つ:地形×径級で選ぶ
1. CTL(カット・トゥ・レングス)型:ハーベスタ(伐倒・枝払い・測尺)→フォワーダ(集材)。地引き中心、勾配が緩く径級が中小の人工林に向く。仕分け精度が高く在庫管理と相性◎。
2. 長尺・プロセッサ+スイングヤーダ型:伐倒→集材→土場でプロセッサ処理。中〜急傾斜で集材距離が長い場合に有効。待ち時間が発生しやすいので、集材側と処理側のタクト合わせが肝。
3. ケーブル(タワーヤーダ/スカイライン)型:急傾斜・谷地形・崩壊リスク対策。設営・撤収の時間を見込んだ上で、一度にまとめて引く計画で歩留まりを確保。
4. 小規模ウインチ+簡易架線型:小面積・アクセス困難地。人員の安全動線と退避場所の設定を最優先に。
TIP:現場の“標準構成表”を用意(地形×径級×路網密度×集材距離→推奨システム)。新人配置時の判断ブレを防ぎます✨。
3) レイアウト設計:土場・導線・旋回半径を先に決める ️
• 土場:トラックの頭抜きが容易な一方通行レイアウト。旋回半径、待避所、吊荷の危険エリアを明示し、立入線をカラーコーンと看板で管理。
• 導線:伐採→集材→積込の交差ゼロを原則に。重機同士の死角を減らすため、視線が抜ける配置にこだわる。
• 雨水排除:側溝・横断排水管(カルバート)・路肩切り下げ。“水が止まる場所”は必ず壊れます。路面クラッシャーの締固め密度も記録。
4) サイクルタイムを短縮する:数式で“詰まり”を見える化
• 生産性の基本式:[出来高(m³/h)= 1サイクル材積(m³) ÷ 1サイクル時間(min)× 60 × 稼働率]
• 計測方法:30分間タイムスタディ。作業区分(伐倒/枝払い/玉切/移動/待ち/段取り/故障)で色分けし、“待ち”が20%を超えた工程から順に改善。
• 改善例:
o フォワーダの積込順を材長・径級別に固定→積込時間▲12%。
o ハーベスタの測尺テーブルに需要優先の長さプリセットを登録→玉切り迷いをゼロ。
o 無線手順(始業・中間・終業)を3フレーズで標準化→段取り替え時間▲8%。
5) 雨天・路面コンディションの判断基準 ⛈️
• 中止ライン:降雨強度10mm/h超 or 路面CBR想定値が閾値以下、視程低下、土場の車輪跡深さが15cm超→作業切替(整備・架線準備・仕分け)。
• 養生:ラバーマット・伐採枝の敷設、路面クラッシャー再転圧、横断溝の解放。復旧の手間をケチるとライフサイクルコストが跳ね上がります。
6) 品質=お金:仕分けとトレーサビリティ ️
• 長さ・等級の現場決定:需要先と共有する“許容誤差表”(±2cm/±5cmなど)を携帯し、迷いをなくす。
• タグ管理:丸太ごとに用途・等級・長さ・伐区コードを色分けタグ+QRで付与。土場での積込ミスとクレームを激減。
• 写真台帳:積込前・出荷前の定点写真を習慣化。品質クレームの【言った/言わない】を無くす。
7) 原価の見える化と見積の“攻め所”
• 機械償却・燃料・消耗品・オペ人件費・保険・運搬を1時間当たり原価で管理。
• 搬出運賃は距離別テーブルで明示し、集材距離短縮の投資(路網改善)とのトレードオフを可視化。
• 見積は“材積×単価”だけでなく、仕分け精度・納期遵守率・安全記録も価値として提示。値引きではなく価値の言語化で交渉。
8) 事故事例→対策:ゼロ災へ
• 挟まれ・巻き込まれ:立入禁止帯の“見える化”(フラッグ・カラーコーン)とリーダーの復唱確認。
• 転落・転倒:傾斜地の動線に退避ポケットを30mごとに設置。
• 通信不良:無線の死角マップを作成し、中継ポイントを設定。
9) ミニケース:どのシステムが最適?
• 条件:傾斜25°、胸高直径24cm中心、集材距離120m、路網密度60m/ha、面積6ha、水路沿いに保全帯あり。
• 比較:
o CTL型:ハーベスタ+フォワーダ。地引き中心で安全、仕分け精度◎。ただし集材距離が長くフォワーダの待ち発生。
o プロセッサ+スイングヤーダ型:設営に30〜40分/日、だが120m引き寄せでフォワーダ待ち解消。土場処理で長さ精度◎。
• 結論:ヤーダ型を採用、ただし土場2面体制(処理用と積込用を分ける)で待ち時間を更に圧縮。出来高+18%、原価▲9%を達成。
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現場で今日からできる3つ ✅
1) 30分タイムスタディを実施し、“待ち”が多い工程を1つだけ潰す。
2) 需要先の許容誤差表をラミネートして重機に常備。
3) 土場レイアウトの手書き図を朝礼で共有し、交差ゼロを徹底。