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日別アーカイブ: 2025年9月3日

第17回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社晋林業、更新担当の中西です。

 

~日本の林業の現在地とこれから ~

日本は国土の約7割が森林で、そのうち多くを戦後造成の人工林が占めます。素材生産量の回復、住宅以外の木造需要、脱炭素の追い風など、林業を取り巻く環境は静かに“構造転換”期へ。とはいえ、収益性・人材・所有者不明地・境界・路網など、課題は積層的。ここでは“いま”の全体像を、現場の意思決定に直結する視点で整理します✨。

1) 価値連鎖(バリューチェーン)を俯瞰する ➡️️➡️
林業の売上は「立木→素材→製材/集成→建築・内装→最終顧客」の連鎖で生まれます。各段階に“ボトルネック”があり、往々にして現場の努力だけでは利益を取り切れません。例えば、①伐出単価の見直し、②丸太の用途別仕分け精度、③乾燥・等級での価値付け、④販路の多角化(住宅材+非住宅、構造材+内装材)、⑤B2Bの継続契約化など、チェーン全体で“粗利が逃げない仕組み”を設計することが肝要です。

2) 供給サイド:路網×機械化×安全 ️
収益の基礎は路網密度と機械稼働率に宿ります。作業道の線形・勾配・路面強度、集材距離の短縮、高性能林業機械の適切な編成(ハーベスタ+フォワーダ等)、交替作業での稼働時間最大化、日報の見える化が鍵。安全は“コスト”ではなく“利益の前提”。労災・ヒヤリの削減は稼働の安定化と保険料の低減につながります。

3) 需要サイド:住宅一本足打法からの脱却 ️
人口動態と住宅着工の減少を直視しつつ、非住宅・中大規模木造、内装・什器、景観・土木(丸太土留め等)、バイオマス熱利用、カーボンクレジットまで、需要の“面”で捉える発想が必要です。CLTやLVL、内装のデザイン需要、オフィスの木質化など、設計者との早期連携で“用途設計”から逆算するのが勝ち筋。

4) 脱炭素と自然資本:二兎を追って二兎を得る ️
森林吸収源やJ-クレジット等の制度が進化し、木材利用のLCA評価も整備が進みます。吸収量“だけ”でなく、更新・間伐・混交化によるレジリエンス、流域治水や土砂災害軽減といった自然資本の価値も加点対象に。経営は「材積×単価」+「環境価値×売り先」のポートフォリオで最適化を図りましょう。

5) ヒト・組織:採用→育成→定着→多能工化 ‍♀️
採用では“給与だけでない”魅力の可視化(週休、装備、安全文化、キャリアパス)。育成はOJT+座学+デジタル教材、定着は評価制度と現場の心理的安全性に直結。チェンソー・集材・重機・測量・ドローンなどの多能工化は、小規模事業体の競争力を底上げします‍️。

6) 収支モデル:現場別の“型”を持つ
傾斜・路網・木齢・樹種の条件で、一番儲かる作業システムは変わります。丸太径級別の歩留まり表、搬出コスト曲線、稼働率、労務費、リスク余裕金まで“前計算”を徹底し、現場ごとにテンプレ化。赤字現場を作らない運用へ⚖️。

まとめ
林業は“長い時間”を扱う産業です。だからこそ、いま手元の1年計画と10年ビジョンを両持ちにする。需要の多角化・路網と機械・安全と人材・環境価値の組み合わせで、地域と会社の持続可能性を同時に高めていきましょう。